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豊洲 マグロの初競り“仁義なき闘い”の舞台裏 なぜ3億3360万円まで吊り上がったのか?

  • カテゴリー:ニュース番組

「やっちゃったね。やりすぎちゃった。5000万~6000万円くらいと思っていた。すぐ銀行さんに行かないと」

日刊SPA!© SPA! 提供 日刊SPA!

 1月5日、豊洲市場で行われた新春恒例のマグロの初競りで、史上最高値となる3億3360万円で「一番マグロ」を競り落とした寿司チェーン「すしざんまい」を展開する喜代村の木村清社長は、神妙な面持ちでこう話した。

 落札された青森・大間産のクロマグロは重量278kgで、キロ単価120万円。2013年に同じく喜代村が競り落とした222kgの大間産クロマグロ1億5540万円(1kg当たり70万円)の2倍以上の値がついた。3億円の“プレミアム・マグロ”はすしざんまいの各店に配分され、中トロ1貫321円など通常価格で振舞われたが、注文した男性客の一人は、「3億円のマグロ、サイコーでした! (写真を撮って)SNSにも載せました!!」と笑顔で話した。

 マグロの初競りが注目されるようになったのは、2008年に香港の寿司チェーン「板前寿司」を展開する実業家のリッキー・チェン氏が“参入”してからのことだ。2009年からは老舗の「銀座 久兵衛」とタッグを組み、仲卸大手「やま幸」を介して、毎年「史上最高値」で落札していたが、その後、板前寿司は撤退。喜代村の一人勝ちが続いていた。昨年こそ、ニューヨークにミシュラン2つ星店も出店する『鮨 銀座 おのでら』に負けたが、2012~2017年まで6年連続で「一番マグロ」を競り落とし、今回も「大本命」と目されていた喜代村は、昨年の屈辱を晴らすため並々ならぬ思いで初競りに臨んでいたという。築地時代から中央卸売市場の取材を続ける日刊食料新聞記者兼代表取締役の木村岳氏が話す。

「昨年の覇者・『鮨 銀座 おのでら』の仲買人を担ったやま幸が、最後の最後まで『すしざんまい』と競り合ったため、今回、最終的に3億円超まで値が吊り上がってしまった。やま幸は相当な意気込みで、初競りが始まるや、仲買人がパッと1本指を立てた……。競り人が『(キロ当たり)1万円?』と聞くと、『10万円!』と答えたので、いきなり10万円スタートの競りとなったわけです。市場関係者の誰もが『こんな競りは聞いたことがない』と口を揃えていたが、何がなんでも落札するつもりだったのでしょう。一方、喜代村の木村社長も、昨年は競り負け、世間の注目が集まらなかったので、今年は意地になっていた。だから、今回の初競りはスタート時点で大多数の仲買人はついていけず、事実上、この両者の一騎打ちとなったのです」

◆史上最高値の初競りは「豊洲離れ」を止める?

 昨年までやま幸で大手寿司チェーンの仲買担当をしていた岡戸商事代表の岡戸宣人さんも、今回の青天井の初競りについて「意地のぶつかり合い」の印象を受けたという。

「今回、互いに一歩も引かず競り落とそうとしていたのは明らかで、マグロ1本に3億円出す店があって『何がなんでも落札してくれ!』という注文が出たからこそこのようなかたちになったのでしょう。(適正価格を超えた取引は)宣伝効果を期待したパフォーマンスで、本来の競りではないといった批判の声もありますが、漁師の人たちも喜んでいるし、市場関係者にとってはいいニュース。こうした景気のいい話題で魚を捕る人が増えてくれれば喜ばしいことですし、日本は水産物の取扱量が減少傾向にあり、流れが変わるきっかけになればいい」

 市場関係者の多くも好意的に受け止めている。昨年10月に豊洲移転後、テレビの情報バラエティ番組などでは新しい観光スポットとして取り上げられるようになった一方、11月にはターレによる死亡事故が発生。水産物の取扱量も伸び悩み、緩やかに「豊洲離れ」が進んでいたからだ。木村氏が話す。

「豊洲移転で敷地面積は1.7倍に広がったにもかかわらず、取引量は“微増”にとどまっているのです。食の嗜好が多様化したこともありますが、インターネット取引も広がっており、商社や食品メーカーは安価な輸入品を直接仕入れ、加工して出荷するなど、卸売市場を通さない流通も増えている。昨年11月には環状2号線が暫定開通し渋滞も大きく緩和されたが、横浜、川崎、千葉など、ほかの水産物市場に比べて豊洲の取扱量の減少幅が目立つ……。ターレの事故も、再び同じようなことが起きれば、警察が場内の道路を公道とみなして取り締まりを行う可能性も出てきた。売り場が大きくなったので移動距離も長くなり、今後、競りの開始時間も早まるため、市場で働く人たちの負担はさらに増えていくことになる。移転後はそんな暗い話が続いていたので、今回、一番マグロが高値で落札されたのをきっかけに客足が戻れば、と期待する声も大きいのです」

 初競りの日の朝、場内には繰り返しターレの荷台に人が乗ることを注意喚起するアナウンスが響いていた。築地から20年以上仲買人をしているという男性が話す。

「ターレの移動にいちいち注文付けられるようになったけど、乗りたくなる気持ちもわかるよ。ほかにも、施設は大きくなったのに店が狭くて仕事がやりづらいとか、みんないろいろ不満はある。ただ、(落札額の)3億円には、みんな驚いてたね。正直、高すぎるし、言いたいこともあるけど、今年に限ってはよかった。実際、例年なら落札額の高騰に文句を言う人が多かったけど、今年は歓迎してやりたいね」

 移転が完了したことで収束したかに見えた「豊洲問題」は、今もなお続いているのかもしれない。

取材・文/日刊SPA!取材班

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